英国の訴訟コスト

第1 訴訟コストの概念および制度

1 英国におけるコストの概念

英国においてコスト( 費用costs) という概念は、米国や我が国での「( 訴訟) 費用」という概念と異なり、弁護士費用を含むものである点が異なる。また、英国におけるコストの定めは、民事訴訟における当事者の行動の合理的コントロールに役立つようになっているように思われ、非常に重要な役割を果たしているように思われるが、我が国においては今までそのような観点からする手頃な紹介がなかったように思われる。

このコストは、ソリシターの報酬ディスバースメント( 訴訟に関連した費用、具体的には、法廷利用料、バリスターの報酬、証人費用その他) の二つの概念を含むものである。そして、ソリシターの報酬は、時間報酬制(アワリー・チャージ)によってなされる。

2 タクスゼーション(訴訟コストの算定)の手続き

2.1 一般原則

英国におけるコスト負担の一般原則は、敗訴者負担主義( follow the event) であり、その額は、裁量によるとされている(最高法院規則オーダー62ルール3)

当事者が受け取るコストは、「タックスド・コスト」とよばれ、裁判所の「タックシング・オフィサー」という裁判官によって認められなければならない(同オーダールール3)。そして、これらの訴訟コスト算定の手続きを「タクスゼーション」という。コスト負担命令は、種々の段階になされうるが、特段の事情がなければ手続きの終了時に纏めてなされる(同オーダールール8)。

2.2 2つのベーシス

タクスゼーションにおいてコストの総額は、ベーシススケールの二つの観点から決定される。

このベーシスには、二つの種類がある。つまり標準ベーシスと賠償ベーシス(インデムニティ・ベーシス)の二つである。

標準ベーシスは、「合理的にかかったすべての費用の観点からみて合理的な額」と定義され、その合理性について疑いがあれば支払う当事者に有利に考えられるものである。是に対し賠償ベーシスは、「不合理な額や不合理に引き起こされたものでないかぎり全てのコスト」と定義され、その合理性についての疑いは、受け取る側に有利に解決される。(二つのベーシスは、合理性についての証明責任が異なっている。従って、合理性についての疑いのないがぎり二つのベーシスは、違いをおこさない)

「合理性」についての疑いを引き起こす場合として、

等が挙げられている。

そして、裁判所が特段の定めをしない場合には、標準ベーシスによって支払われる(最高法院規則オーダー62ルール12) 。

一方、どのような仕事(例えば、手紙作成、バリスターへの指示書作成)に対しどの程度の額がコストとして支払われるか、がスケールの問題である。これについては規則に定めがある。高等法院では、一つの定めしかなく、また、金額については定めがないので、具体的な額はタクシング・オフィサーの裁量によることになる。これに対してカウンティ・コートでは、四つのスケールによってコストが計算される。

2.3 タクシング手続き

2.3.1 高等法院におけるタクシングの手続きに際し、勝訴当事者(のソリシター)は、ビル(請求書)を作成しなければならない。ビルには、何時、どのような手続きに、どれだけのコストがかかったか、が詳細に時系列に従って記載されている。(現実には、あまりにも細かな処理が必要となるため、専門のビル作成業者に依頼する場合が多い。) そして、命令を得ようという段になると、審問の期日をいれ、書類とともにビルを提出する。そして、七日以内にビルのコピーを相手方に送り、その旨を裁判所に通知する。そして、審問では、タックス・オフィサーが項目毎に認めたり、減額したり、場合によっては認めなかったりする。 2.3.2 タックス・オフィサーが項目毎に検討する過程においては、そのコストが現実にかかったかそうかかるのが合理的であったか合計額は合理的なものであるか、の点について検討しなくてはならない、とされる。 特に、当事者が不合理もしくは不適切に行動したり、もしくは懈怠したと裁判所が認める時は、裁判所は、かかる行動もしくは懈怠によるコストは、認めることができないと命令を下すことができるし(同オーダールール28)、さらに、逆にその当事者がコストを支払うべきと命じることもできる(同オーダールール10)。 2.3.3 具体的には右のような手続きによってコスト負担命令がなされるが、実際の運用では、全面的に勝訴した当事者でもビルの六割から七割に減額されて認められる例がかなり多いのが現実であるようである。

3 訴訟費用敗訴者負担制度と和解促進策

3.1 訴訟費用敗訴者負担制度の経済学的分析

訴訟費用敗訴者負担制度は、「イギリスの裁判所は、常に、当事者にたいして訴訟を最後まで続けるより早く和解で解決することを奨励する」( リチャード・プレイル前掲四八頁)といわれているし、また経済学的に分析したときに、「『訴訟費用敗訴者負担』というイギリス流のルールの方が、『訴訟費用自己負担』であるアメリカ流のルールよりもトライアルにまで至る割合が小さくなるという意見がある」( ロバート・クーター、トーマス・ユーレン、太田訳「法と経済学」三七二頁)とか、言われることとなる。とくに、経済学的には、権利を有するものが、訴訟を提起しやすくなり、また、勝訴できないような事件を抑制することでより望ましいといわれることがある。

3.2 和解促進のための積極的制度

英国の訴訟手続きでは、むしろ、このような原理的なメリットに加えて、コスト負担手続きを積極的に和解促進策として利用している点に特徴があるようにおもえる。具体的には、

ペイメント・イントウ・コート (供託)

最高法院規則オーダー22ルール1では、「貸金請求訴訟若しくは損害賠償訴訟においては、被告は、何時でも原告の要求する金員に関し請求を満足させるため金員を供託することができる( 以下略) 」と定めている。そして、この供託の事実およびその額は、コストの算定の上で裁判所が考慮にいれなくてはならないとされている( 同オーダールール9(b))。これが、どのように具体的に訴訟促進効果をもつか、という点について具体例をあげると、例えば、100ポンドの損害賠償請求訴訟中に、被告が30ポンドの供託をしたにもかかわらず、原告が、実際の損害額は、80ポンドをくだらないはずだとして、その金員を受け取らず、トライアルまでいったとする。その結果、裁判官が、30ポンドの損害しかなかったと判断したら、結局、供託以降の被告のコストは( 勝訴者である) 原告が支払わなくてはならないことになる。結局、かかる供託がなされると原告はその訴訟の行く末について真剣に検討しなくてはならず、訴訟の結果について不確かであれば、かかる金員を受領して和解しようという誘因になると言えよう。

カルダーバンクレター

貸金請求訴訟若しくは損害賠償訴訟以外において、当事者は、和解の申込みをなすことができ、裁判所は、上と同様に申込み日以降についてのコストを和解拒絶者の負担とすることができる。なお、この和解の申込みは、開示手続きとの関係でコストの算定までは非開示書類としてなされる。その申込みには、「コストに関する場合以外にはウイッズアウト・プレジャディス」という文言が記載されるのが一般であり、また、かかる和解申し入れの手紙は、そのリーディングケースとなった事件の名をとってカルダーバンクレターと呼ばれる。現在では、最高法院規則オーダー22ルール14に制定されている。

第2 英国の訴訟改革におけるコストをめぐる議論

2.1 「民事司法報告」

現在、英国の訴訟改革については、非常に詳細なフォローがなされている。そして、それらは、主としてWoolf報告およびその前後の改革の作業をフォローするものであるが、コストの問題点については、従来から非常な問題点であるとして指摘されていたところである。1989年に出された「民事司法報告」は、「主たる非効率と改革へのプログラム」について報告をし、提言を行っている。この中で報告委員会は、民事司法における非効率として遅延、費用、複雑さ、司法へのアクセスの4点を挙げている。このうち、費用についての報告については、筆者が、別稿でふれたところである。この点の詳細については、別稿を参照ねがいたいが、この「民事司法報告」の段階において、すでに、

1コストの殆どは、保険会社や労働組合、リーガルエイド等の機構によって支 払われるが、保険金支払い者、組合員や納税者は、制度の非効率性の「つけ」を 回される理由はない。
2コストにたいする恐れが、訴訟提起を思い止まらせている。
3コストが高いあまり、自分でコストを負担する人達は、和解や請求の放棄を 余儀なくさせられたり、貯金や家を処分して資金を作らなくてはならなくなる。
などの問題があると、報告されている点は、注目に値する。


2.2 ウールフ中間報告書
この中間報告書は、「司法へのアクセス」というタイトルで、そこでのコストの分析の要点は以下の通りである。

2.2.1 リサーチ
そのリサーチについては、以下のとおりである。
そこでは、「調査(The Study)が、最高法院のタキシング・オフィスと協力して調査がなれれた。これは、1994年から1995年の間に、タキシング・オフィスに提出さたデータであって、コスト請求・認容金額、ケースのウエイト、訴訟の価額、バリスターの請求報酬・認容報酬、専門家の請求・認容報酬価格、ディスカバリーと書面の時間とコスト、訴訟のステージ、解決の手段、中間的行動、成功当事者のアイデンティティ、事件の時間、リーガル・エイドなどについて調査が行われた。

2.2.2. 事件の種類とコスト

事件の種類とコストの平均額をしめしたのが次の表である。

Type of case
Amount of costs Bankruptcy,
Companies
Court &
Partnership
N=61
Wills &
Chancery,
Other
N=72
Official
Referee,
Breach of
Contract,
Libel &
QB Other
N=238
Breach of
Copyright,
Injunction/
Declaration
N=32
Medical
Negligence
N=43
All
Personal
Injury
N=181
Commercial
N=46
Average costs
allowed /B>
14,792 15,860 25,786 25,031 38,252 20,413 29,418
Lowest costs
allowed /B>
3,439 2,417 2,515 2,317 5,369 2,673 4,904
Highest costs
allowed /B>
67,236 76,287 327,519 176,573 159,470 144,937 121,865

2.2.3 コストと 事件の種類
コストの認容価額と事件の種類の間には、一般的に相関関係がある。この関係をしめしたのが、次の表である。

Type of case

Bankruptcy,
Companies
Court &
Partnership
N=61
Wills &
Chancery,
Other
N=72
Official
Referee,
Breach of
Contract,
Libel &
QB Other
N=238
Breach of
Copyright,
Injunction/
Declaration
N=32
Medical
Negligence
N=43
All
Personal
Injury
N=181
Commercial
N=46

% % % % % % %
<=10,000</B> 51 49 33 28 9 33 17
>10,000 &
<=20,000</B>
34 26 29 28 37 38 26
>20,000 &
>=30,000
3 7 14 16 14 11 24
>=30,000 &
<=40,000</B>
3 13 5 19 7 7 15
>=40,000 &
<=50,000</B>
5 3 7 0 9 4 4
>=50,000 3 3 12 9 23 7 13
Total 100 100 100 100 100 100 100

もっとも、かなり実際上は、幅があるのであって、 もっとも廉価なビルが、請求価額は、£100,000から£250,000 の事件であり、もっとも、高価なビルは、£327,519(7800万円程)であり、これは、請求価額が、£250,000の事件であった。

この幅をあらわすのが次の表である。


Value of claim /TH>

<=12,500<BR>N=75 >12,500
<=25,000<BR>N=75
>5,000
<=0,000<BR>N=85
>0,000
<=00,000<BR>N=80
>00,000
<=50,000<BR>N=80
>50,000
N=63
No value
given
N=226
Mean costs
allowed /B>
12,044 12,877 17,760 23,760 31,533 58,434 19,104
Lowest costs
allowed /B>
2,832 2,673 4,087 4,667 2,515 3,911 2,317
Higest costs
allowed /B>
69,295 66,216 78,446 121,545 96,233 327,519 176,573

Value of claim /B>

コストと請求の価格について詳細に見ていくと、もっとも請求金額の少ない事件においては、半分は、£10,000以下のコストで住んでいる。これに対して、請求金額がもっとも高いケースにおいては、たった14%にすぎない。全体では、41%が、£10,000以下である。詳細は、次の表を参照されたい。


Value of claim

<=2,500<BR>N=75 >2,500
<=5,000<BR>N=75
>5,000
<=0,000<BR>N=85
>0,000
<=00,000<BR>N=80
>00,000
<=50,000<BR>N=80
>50,000
N=63
No value
given
N=226

% % % % % % %
<=0,000</B> 51 48 31 22 12 14 41
>0,000 &
<=0,000</B>
41 33 39 37 34 13 29
>0,000 &
>=0,000
4 16 19 15 12 11 11
>0,000 &
<=0,000</B>
1 2 3 11 10 11 10
>0,000 &
<=0,000</B>
1 - 6 5 11 9 4
>0,000 1 2 2 9 20 41 5
Total 100 100 100 100 100 100 100

Value of claim /B>

16.平均的なコストを請求金額との関係で分析したのは次の表ということになる。

Costs allowed as a percentage of value of claim Number of cases in sample % Cumulative
Costs = less than 5% of value of claim 34 8 8
Costs = 5% to under 10% of value of claim 40 9 17
Costs = 10% to under 20% of value of claim 85 19 36
Costs = 20% to under 30% of value of claim 51 11 47
Costs = 30% to under 40% of value of claim 52 12 59
Costs = 40% to under 50% of value of claim 40 9 68
Costs = 50% to under 60% of value of claim 22 5 73
Costs = 60% to under 70% of value of claim 15 3 76
Costs = 70% to under 80% of value of claim 12 3 79
Costs = 80% to under 90% of value of claim 14 3 82
Costs = 90% to under 100% of value of claim 8 2 84
Costs = 100% to under 150% of value of claim 26 6 90
Costs = 150% to under 200% of value of claim 16 4 94
Costs = 200% to under 300% of value of claim 14 3 97
Costs = 300% to under 500% of value of claim 10 2 99
Costs = 500% or more of value of claim 8 1 100

447 100 100
Costs allowed as a percentage of value of claim


この分析の結果、サンプルの半分については、請求金額の30パーセントを超えないということが明らかになった。もっとも、3分の1は、請求金額の半分を超えている。 もっとも、これは、タキシングされた額であり、実際の額は、これを超える。16パーセントの請求書は、請求金額の100パーセントを超えるし、6パーセントは、200パーセントを超える。

Case Weight Value of claim /B> Costs allowed /B> Costs as % of value
C 2,000 69,295 3,464
D 1,000 26,398 2,639
E 500 6,280 1,256
D 1,000 12,198 1,219
E 1,750 11,287 644
C 2,000 12,462 623
C 3,000 17,584 586
E 2,000 10,417 520
E 3,000 12,841 428
E 2,000 7,726 386
E 2,439 9,261 380
E 3,500 13,224 378
C 9,000 33,937 377
D 5,000 18,428 368
D 2,500 8,794 351
D 12,500 42,006 336
C 4,800 16,135 336
E 1,500 4,765 317
E 4,500 13,132 291
E 2,500 6,919 277
B 25,000 66,216 264
D 5,000 12,954 259
D 7,000 16,633 237
E 2,500 5,685 227
E 4,000 8,882 222
D 10,000 22,139 221
E 3,000 6,284 209
B 37,500 78,446 209
C 13,000 27,034 207
E 9,000 18,408 204
これらの調査から、中間報告書のChapter 25 - Costsの項目では以下のような分析がなされている。
1.「コストの問題は、私たちの訴訟システムをリセットするのにもっとも深刻な問題である」という言葉ではじまる分析は、この問題こそが、司法へのアクセスに直接関係するものであるとしている。

つぎに、「Why high costs are a problem」において、このコストの位置づけについて議論がなされる。高いコストは、それだけでは、問題ではない。しかしながら、不必要なコストは、認容できないものである。経済的に弱い訴訟当事者の司法へのアクセスを維持するという目的からすれば、高いコストは、その目的と一致しないものになるのである。

また、「The client's right to information as to costs」という項目では、法律家としてのレベルを維持し、法律制度のインテグリティを維持するための市場へのアクセスの規制および規制が、高い報酬の大きな要素となっているとしている。そこでは透明性が確保されるべきであるとされ、裁判所における事件管理において、コストの情報が提供され、当事者にも低供さなくてはならないとされている。

「Agreements as to costs」という項目においては、各段階毎の費用ないしは、固定費用が示唆されているのである。

これらの考察のもとに少額訴訟におけるコスト負担なしのルールが提案されているのである。

ウールフ報告書

ウールフ最終報告書において、コストの問題についてのフィールドスタディは、その添付資料3(Annex III Survey of Litigation Costs: Summary of Main Findings)において、詳細に報告されており、また、具体的な数値の表も提示されている。これらの数値は、中間報告書が、673のケースについて、分析したものであったが、これに対して、2184のケースについて分析されている。

事件の傾向(Characteristics of sample)について、資料は、2184の事件を10のタイプに分け、訴訟物の価額、ケースのウエイト、リーガル・エイド、事件のステージ、解決の方法、当事者の別などから分析されている。

平均コスト(Average costs)について、

42パーセントが、1万ポンド以下であり、28パーセントが、1万から2万ポンドである。これらのコストと事件の関係を表にしたのが下の表である。オフィシャルレフェリーと、商事事件が、もっともコストが高く、judicial review 事件がもっとも、コストがかからない。

Case type

Costs allowed /B>

<=10,000</B>
>10,000 &
<=20,000</B>
>20,000 &
<=30,000</B>
>30,000 &
<=40,000</B>
>40,000 &
<=50,000</B>

>50,000 

 Total 
Medical Negligence (N=206) 25% 35% 11% 9% 4% 16% 100%
Personal Injury (N=323) 38% 36% 10% 5% 3% 7% 100%
Professional Negligence (N=205) 32% 28% 10% 9% 5% 16% 100%
Official Referees' (N=206) 24% 28% 11% 13% 6% 17% 100%
Breach of Contract (N=214) 43% 27% 12% 6% 3% 9% 100%
Judicial Review (N=206) 68% 20% 5% 4% 1% 1% 100%
Chancery (N=204) 46% 29% 11% 6% 3% 5% 100%
Queen's Bench 'other' (N=205) 58% 23% 8% 2% 6% 3% 100%
Commercial (N=106) 29% 21% 15% 9% 3% 23% 100%
Commercial (no value) (N=102) 36% 22% 15% 9% 8% 11% 100%
Bankruptcy/Companies Court (N=77) 65% 17% 6% 5% 3% 4% 100%
Bankruptcy/Companies Court (no value) (N=130) 59% 29% 4% 5% 1% 2% 100%
All cases (N=2184) 42% 28% 10% 7% 4% 10% 100%

「Costs and case weight」

また、英国において事件の大変さによって、クラス分けをする際に、ヘビーな事件については、平均コストが、よりかかることが注目される。そして、この事件の、ヘビーさは、上述の事件の分類とも関連する。:

Table 3: Median costs allowed by claim value

次の表4は、請求金額との割合について見たものである。もっとも、少額の事件については、100パーセントを超えており、請求金額が低ければ低いほど、この割合が高くなることになる。

.£12,500 から£25,000の間では、人心被害事件の41パーセントから96パーセントのオフィシャルレフェリーまで、分かれることになる。

Table 4: Costs as a percentage of claim value (costs/value x 100)

Costs as a % of claim value (median) Claim value /B>

<=12,500<BR>N=361
>12,500 -
<=25,000<BR>N=287
>25,000 -
<=50,000<BR>N=355
>50,000 -
<=100,000<BR>N=303
>100,000 -
<=250,000<BR>N=248

>250,000
N=192
Medical Negligence 137% 57% 46% 33% 21% 12%
Personal Injury 135% 41% 28% 22% 13% 11%
Professional Negligence 135% 54% 43% 41% 27% 15%
Official Referees' 158% 96% 48% 53% 31% 19%
Breach of Contract 138% 46% 32% 21% 12% 5%
Chancery 119% 62% 40% 17% 8% 2%
Queen's Bench 'other' 154% 44% 33% 14% 5% 3%
Commercial 174% 54% 27% 38% 16% 2%
Bankruptcy/Companies Court 115% 39% 18% 15% 10% 1%

また、この報告では、事件の長さについても報告されている。(単位は月)

Case type Mean Median Max Min Number of case
in category
Whole sample 34 29 214 0 2184
Medical Negligence 65 61 214 26 206
Personal Injury 56 54 117 1 323
Professional Negligence 41 35 118 7 205
Official Referees' 34 30 116 1 206
Chancery 32 27 152 0 204
Breach of Contract 29 25 114 1 214
Queen's Bench 'other' 28 21 128 2 205
Commercial 25 20 100 0 106
Commercial (no value) 16 7 93 0 102
Bank/Company (no value) 15 9 118 0 130
Bankruptcy and Company 13 7 118 0 77
Judicial Review 12 11 36 0 206

テーブル2

Median costs*
Number and % of cases
in category

Assessment of weight of case
A
(Heaviest)
B C D E
(Lightest)
Total

/B> N % /B> N % /B> N % /B> N % /B> N % N %


















Medical Negligence 92,472 (21) 10 56,746 (29) 14 24,982 (49) 24 12,418 (75) 36 6,139 (32) 16 206 100
Personal Injury 91,720 (3) 1 54,962 (29) 9 21,429 (68) 21 12,879 (104) 32 7,264 (119) 37 323 100
Professional Negligence 150,556 (9) 4 70,408 (24) 12 31,974 (46) 22 12,845 (76) 37 6,096 (50) 24 205 100
Official Referees' 133,805 (7) 3 88,220 (20) 10 35,384 (57) 28 15,382 (69) 33 7,462 (53) 26 206 100
Breach of Contract 245,208 (2) 1 89,484 (15) 7 33,418 (34) 16 14,626 (72) 34 6,471 (91) 43 214 100
Judicial Review 29,207 (3) 1 27,782 (11) 5 15,234 (42) 20 7,807 (55) 27 6,132 (95) 46 206 100
Chancery 199,222 (3) 1 122,061 (2) 1 31,779 (33) 16 12,374 (84) 41 6,329 (82) 41 204 100
Queen's Bench 'other' 231,395 (5) 2 42,546 (4) 2 27,761 (27) 13 11,382 (68) 32 6,208 (101) 50 205 100
Commercial 135,521 (12) 11 45,321 (17) 16 21,697 (32) 30 13,606 (23) 22 6,494 (22) 21 106 100
Commercial (no value) 95,911 (5) 5 39,997 (10) 10 27,690 (33) 32 10,153 (35) 34 5,774 (19) 19 102 100
Bankruptcy/Comp Ct 170,129 (1) 1 44,795 (3) 4 22,168 (15) 19 9,306 (28) 36 5,559 (30) 39 77 100
Bankruptcy/Comp (no val) 42,280 (4) 3 54,700 (1) 1 18,110 (18) 14 10,446 (50) 38 6,076 (57) 44 130 100
Whole Sample 107,089 (75) 3 54,962 (165) 7 27,277 (454) 21 12,094 (739) 34 6,469 (751) 35 2,184 100

表 事件のコストとメディアン・コスト

Median costs* Number and %
of cases in category

Claim value /B>

<=12,500<BR>N=361
>12,500 -
<=25,000<BR>N=287
>25,000 -
<=50,000<BR>N=355
>50,000 -
<=100,000<BR>N=303
>100,000 -
<=250,000<BR>N=248

<250,000<BR>N=192
Total

/B> N % /B> N % /B> N % /B> N % /B> N % /B> N % N %





















Med Negligence 10,482 56 27 12,464 30 15 15,655 44 21 24,982 27 13 35,936 19 9 76,011 30 15 206 100
Personal Injury 7,099 45 14 8,006 47 14 10,474 71 22 14,881 76 23 18,688 66 20 64,435 18 6 323 100
Professional Neg 9,440 42 20 9,688 42 20 13,250 41 20 27,524 37 18 34,208 23 11 78,904 20 10 205 100
Official Ref 12,245 51 25 19,696 38 18 17,272 41 20 34,355 25 12 43,865 36 17 133,805 15 7 206 100
Breach of Cont 8,882 43 20 7,774 30 14 13,405 57 27 14,993 47 22 14,632 19 9 31,610 18 8 214 100
Chancery 7,316 49 24 11,150 33 16 13,434 35 17 10,757 35 17 9,421 27 13 11,906 25 12 204 100
Queen's Bench 6,693 51 25 7,751 43 21 10,677 43 21 9,912 21 10 8,876 24 12 16,199 23 11 205 100
Commercial 6,187 10 9 10,907 10 9 13,522 13 12 20,262 15 14 27,537 26 24 26,503 32 30 106 100
Bankruptcy/Comp 6,785 14 18 7,050 14 18 5,748 10 13 9,015 20 26 16,592 8 10 13,042 11 14 77 100


第4 おわりに

詳細に英国における訴訟コストをめぐるデータを見てきた。詳細に見てきたのは、このような分析が我が国において欠落していると考えるからである。一般の弁護士の感覚からすれば、何10時間かけて、真実が明らかになるために努力をしているのに、裁判所が、低額な損害賠償額しかみとめず、裁判所は、裁判所を利用する当事者において裁判にコストをかけていることを本当に認識しているのであろうかと考えることはよくあるであろう。

司法改革において、訴訟費用の敗訴者負担制度の導入が議論されることは一定の進歩と評すべきものと思われるが、我が国では、上記のような調査は、いまだおこなわれていないものと考えられるのである。そのための参考資料として、この点を明らかにすることには一定の意義があるのであろう。